「痛風」と聞くと、中年以降の男性をイメージする人が多いかもしれません。実際、痛風はこれまで「男性の病気」として認識されてきました。しかし、近年では生活習慣の変化や女性の社会進出、食生活の欧米化などにより、女性の痛風患者が増加しているのです。さらに、女性には女性特有のリスク要因が存在します。
この記事では、「女性特有の痛風リスク」について詳しく解説し、予防・対策のポイントをわかりやすく紹介します。
痛風とは?その基本をおさらい
痛風は、血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くことで、尿酸の結晶が関節などに沈着し、炎症を引き起こす疾患です。主に足の親指の関節に激しい痛みや腫れが起きるのが典型的な症状で、発作的に繰り返されます。
尿酸は、プリン体という物質が分解されることで生成されます。プリン体は細胞の代謝産物であり、レバーや魚卵、アルコールなどに多く含まれています。体内で作られる尿酸の約8割は体内の代謝によるもので、残りの2割は食事から摂取されます。
なぜ痛風は「男性の病気」とされてきたのか?
痛風患者の大多数が男性であることは事実です。その主な理由は以下の通りです。
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ホルモンの影響
女性ホルモンであるエストロゲンは、尿酸の排出を促進する作用があります。これにより、女性は自然と尿酸値が低く保たれやすく、痛風になりにくいとされてきました。 -
筋肉量と代謝
男性は筋肉量が多く代謝が活発なため、尿酸の生成量が多くなる傾向にあります。 -
アルコールや高プリン食品の摂取傾向
従来、男性の方が酒量が多く、食生活もプリン体の多い食品に偏りがちでした。
女性における痛風リスクの増加要因
1. 閉経後のホルモン変化
女性にとって最大の痛風リスクのひとつが閉経です。閉経によりエストロゲンの分泌が減少すると、尿酸の排泄能力が低下し、高尿酸血症になりやすくなります。閉経後の女性では、痛風のリスクが一気に上昇します。
2. ダイエットと断食によるリスク
近年は、極端な糖質制限や断食ダイエットが流行しています。これらの方法は急激な体重減少や筋肉分解を引き起こし、体内で尿酸の生成量を増加させる可能性があります。特にケトン体の増加によって尿酸の排泄が抑制される点も、見逃せません。
3. 肥満とメタボリック症候群
肥満、特に内臓脂肪の蓄積は、尿酸値の上昇と密接に関連しています。最近では女性にもメタボリック症候群が増えており、それに伴い痛風のリスクも増大しています。
4. 高タンパク志向の食生活
筋トレブームや健康志向の高まりから、高タンパク質の食事が人気ですが、動物性たんぱく質にはプリン体が多く含まれるため、摂りすぎには注意が必要です。
5. 腎機能の低下
腎臓は尿酸の排泄を担う重要な臓器です。加齢とともに腎機能が低下する女性も多く、それが尿酸値の上昇に直結します。特に60代以降の女性では、腎臓機能の変化による痛風リスクが無視できません。
痛風の症状は男性と違うの?
女性の痛風は、発症年齢が遅い(多くは50代〜70代)という特徴があります。初発症状は男性と同様に足の親指や足首の腫れ・痛みから始まることが多いですが、女性の場合、複数の関節が同時に痛むこともあり、関節リウマチと間違われるケースもあります。
また、女性では痛風が発症する前に、慢性的な関節痛やむくみ、疲労感が出ることもあり、気づかれにくい傾向があります。
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