痛風は、尿酸値が高いことで起こりますが、余分な尿酸を体に溜め込まないようにするには、腎臓を介して尿から排泄することはよく知られています。
実は、尿酸の排泄は腎臓だけでなく、腸からも行われていることが分かっています。
◆ 実は尿酸排泄の機能をもつ腸
私たちが、ごはんを食べると、腸で栄養が吸収されて、栄養素を吸い取った後の食べ物の残りが便として排泄されますが、腸の機能はこれだけではありません。
痛風の原因である尿酸の排泄に焦点を当てると、余分な尿酸は、腎臓を介して尿から排出されるだけではなく、腸からも体の外に出そうとするのです(腸より腎臓の方が尿酸を多く排出させます)。
腸から尿酸を排泄するためには、尿酸の運び屋さんである、尿酸トランスポーターABCG2に頼ります。このABCG2は腎臓や腸などに存在して、尿酸を体の外に運び出す手助けをしてくれることが分かっており、ABCG2の遺伝子変異によって、尿酸を排泄する力に個人差が出てきます。
◆ 尿酸排泄は腸の具合に左右される
以前から、腸炎などの消化器疾患によって高尿酸血症(血液中の尿酸値が7.0mg/dL以上の状態)になっている患者さんがいることが知られています。
その理由を探るために防衛医科大などの研究チームは、腸に炎症が起こるとABCG2が尿酸を体の外に出すことが難しくなるのではないかと考え、急性腸炎の小児患者を対象に尿酸値とABCG2遺伝子の関係を調べました。
すると、尿酸値は腸炎のときは平均8.8mg/dLなのに比べて、腸炎が回復すると平均4.7mg/dLと、なんと数値が半分近く下がるという結果がでました。また、ABCG2の遺伝的な機能低下が起こっている時に腸炎が起こると尿酸値に影響が生じることが分かったのです。
◆ 腎臓が悪いと尿酸排泄は腸頼み
また、同研究チームは、慢性腎不全の透析患者を対象にABCG2の遺伝子解析も行っています。透析を受けている患者さんは、腎臓からの尿酸排泄がほとんどできないので、腸からの排泄に頼るしかありません。
この解析で、遺伝的にABCG2の機能が低下している人ほど尿酸値が高いので、腸に存在するABCG2が重要な役割を果たしていることが分かったのです。
怖いことに、慢性腎不全から透析になり、さらに腸炎になったときは、尿酸を腎臓からも腸からも排泄できず、尿酸値が上昇して痛風を発症する可能性もあるのです。
[参考記事]
「[痛風の合併症 痛風腎]痛風になると腎臓も悪くなる」